左ハンドルの外車
英国車の左ハンドル。
まったく本国仕様ではない並行輸入車を所有して、
10ヶ月が過ぎたころ、その事件が起きた。
当時、まだ若く血気盛んだったため、事故は自分に無関係だと思っていた。
それまでは。
道路のセンターラインが黄色いのは、ラインからはみ出して
追い越しをするのが禁止されている。
前にノロノロと走行している車がいたら、センターラインの色など気にせずに、
迷わずアクセルを目一杯踏み込んで走るべき。と考えていた。
その日も、これからどんなことが起こるか知る訳もなく、
センターラインが黄色の下り坂を、アクセル全開で走行していた。
当然、前を走っている車がどんどん近づいてくる。
当然、前を走っている車を躊躇うことなく追い越す。
その時、前を走っている車が右ウインカーを点灯させて右に曲がる動作を始めた。
当然、できることは何もなく、前を走っていた車の右後方に激突した。
その瞬間、何を思い、何を考えていたのかは今となっては覚えていない。
もちろん、それまでの人生を振り返るような映像は見えてこなかったし、
スローモーションの世界に切り替わることもなかった。
ただ、前を走っていた車が勢い良く建物に向かって突進していくのを見つめていた。
流行っていたのか、過ぎ去っていたのか分からないが、
バック・トゥ・ザ・フューチャーのような光景が広がったことを覚えている。